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SUS310S・インコネル・タングステン異種格闘技最強選手権

耐熱性、耐食性、強度、加工性…
耐えて、耐え抜き、強い力や作用に対しても、屈したりせず持ちこたえる金属材料たち。
材料選定の難問解決になれば、ということで今回も全く分類が異なる3つの金属を4つの角度から比較します!

NPS®では、以前はステンレス、鉄、アルミを主に金属加工をおこなってきましたが、最近はおかげさまで対応できる素材がどんどん増えています。

ここで、ざっと振り返ってみたいところですが…しっかりまとめているページがあるので、こちらの『材質』をご覧ください。

というワケでさまざまな素材を加工しているNPS®ですが、『お問い合わせ』でよく頂くご相談はやっぱり

  • この要件を満たす金属は、何を選ぶといいですか?
  • コスト面も考慮して、使用金属をオススメしてもらえませんか?
  • ステンレス以外で、適した材料は何ですか?
  • 耐熱温度1,800℃に耐えられるSUSはどれですか?
  • 耐熱性、耐食性に優れた金属は、この選定で間違っていませんか?

…永遠の難問、材料選定で困っていらっしゃる方がなんと多いことでしょう。
厳しい環境にも耐えないといけない部品達、製品の性能に大きく影響を与えるので、材料選定は重要ですね。

そこで今まで、材料選定のお役に立ちたい一心で鼻息荒く『最強金属』のお話をいろいろ書いてきました。こちらをぜひ、読んでやってください。

今回もこの流れからすると…ハイ!『最強金属』のお話になります。
ぜひ、今回もぜひとも最後まで読んでやってください。

多様性の時代、全く違う金属3つを比較してみる

今回は、この3つ!

  • オーステナイト系ステンレスから『SUS310S』こちらのお話もぜひどうぞ!
  • ニッケル合金から『インコネル』こちらのお話もぜひどうぞ!
  • 単一金属から『タングステン』*初登場!

 

分類からして、全く違う金属たち。

次は、もう少し詳しく主な含有成分を表にしました。
含有成分を見ると、なんとなく性質が分かってくるかも?

SUS310Sインコネルタングステン
鉄(Fe)50〜60%5〜10%
ニッケル(Ni)19〜22%50〜70%
クロム(Cr)24-26%15-23%
タングステン(W)99%以上

散々「ニッケルを含んでいると強い」と言い続けてきたので、『SUS310S』は鉄を主成分としながらも、ステンレスの中ではニッケルの含有量が多いので、ステンレスでは『最強』です。
また、インコネルのニッケル含有量を見てください!多ッ!!ハイ、『最強』です。
分かりにくいのが『タングステン』。単一金属だけあって、他の金属がほとんど含まれていない純度が高い金属だということだけしか分かりません…。

タングステンの製作事例(お客様のご好意で掲載許可をいただきました)

『タングステン』とは、なんぞや?

謎多き『タングステン』。謎が多い子は俄然、興味をそそります。

『タングステン』とは、1781年スウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレが元素化しました。スウェーデン語で『重い石』という意味だけあって、金よりも比重(密度)が高いです。

また、レアメタルの一種です。そのため、リサイクルも推進されています。

さらに先述でも、「単一金属(純金属)」とご紹介しましたが、タングステンだけで、こんなに優れた特徴を持つ子でした。

  • 高温に強い(高融点)→→ 3,380℃!! 金属単体の中で最も融点が高い、鉄は1,500℃
  • 重い(高比重)→→ 金と同等、鉄の2.5倍、鉛の1.7倍
  • 熱変形に強い →→ 高温下でも形状安定性に優れている
  • 強度が高い(硬い) →→ 変形もしにくい、鉄の2倍の強度

タングステンの製作事例(お客様のご好意で掲載許可をいただきました)

いよいよ異種格闘技戦、開幕!

謎多き『タングステン』を簡単にご紹介しましたが、勝負する前から勝ちは決まったかのように見えますが、ここの大切なポイントは以下の2つです。

どこまでの性能が必要なの?
コストは大丈夫?

という訳で性能やコストなど、多角的な視点で戦う異種格闘技4試合、とくとご覧ください!

 

1試合目
使用環境の観点からの比較

SUS310Sインコネルタングステン
耐熱性1,000℃、耐熱性は良好(高温酸化に強い)
繰り返し高熱が加わる環境下に適している
劣化しない使用温度は約500℃まで
1,800℃の優れた耐熱性
1,000℃以上の環境でも性能を維持
高温化でも変形しにくい
劣化しない使用温度は約700℃まで
極めて高い融点(3,380℃)を持つ
劣化しない使用温度もほぼ同じ
耐食性優れた耐酸化性、耐硫化性耐酸化性、耐硫化性に加え、塩化物や腐食環境に非常に強い耐食性はそれほど高くない、酸やアルカリで腐食しやすい
強度高温でも適度な強度を維持高温強度が非常に高い非常に高い強度を持つが、脆い性質。
比重7.9(標準的)8.5(やや重い)19.3(非常に重い)
注意600〜800℃で長時間加熱をおこなうと、シグマ相という常温で脆い組織が生成される1,800℃まで耐えられるが、ボロボロになってしまう。
できれば700℃を目安にすると耐腐食性能の低下が防げて◎
400℃を超える場合は酸化に特別な配慮が必要。
熱膨張率が非常に低いため、急激な温度変化を与えると割れる可能性がある

タングステン、いろいろな意味で強いですねぇ。

 

2試合目
金属加工の観点からの比較

SUS310Sインコネルタングステン
加工加工しやすい
切削や溶接が比較的容易
加工が難しい
高温における加工が必要な場合あり。
専用工具が必要
非常に硬く脆いため、加工が困難
放電加工や粉末冶金を使用することが多い
溶接良好難しいが可能
一般的には高度な溶接技術が必要ですが、NPS®にお任せください
困難

SUS310Sの優しさが身に沁みます。

3試合目
用途の観点からの比較

SUS310Sインコネルタングステン
用途高温炉部品、熱処理炉部品、化学プラント部品、排気系部品ジェットエンジン部品、ガスタービン部品、化学プラント部品、核エネルギー関連部品電球のフィラメント、X線管のターゲット、超硬合金、耐摩耗部品

各々、持ち場で頑張ってますね!

 

4試合目
コストの観点からの比較

SUS310Sインコネルタングステン
コストステンレスの中では高額だが、比較的安価、SUS304の約3倍高価、
SUS310Sの約70倍
非常に高価、
SUS310Sの約200倍

タングステンをご注文の場合は、気合いが必要ですッ!

 

いや〜、3者共に4試合を終え、それぞれの持ち味を活かした良い試合になりました。
試合前は「『タングステン』が強いんでしょ?」と、逃げ切りの展開も予想しそうになりましたが、
どっこい!SUS310Sも“耐熱King of ステンレス”らしく、バランスの良さを見せつけました。

 

結局、材料選定もバランスが大事

やっぱり、材料選定において大事なことはこの4つです。

  • 使用環境: 温度、圧力、腐食性など、使用環境を考慮する
  • 必要な特性: 強度、硬度、耐熱性、耐食性など、必要な特性を明確にする
  • 加工性: 加工方法、形状、寸法公差などを考慮する
  • コスト:材料費だけでなく、加工費(NPS®スタッフの人件費♡)も含まれます


高い性能が必ずしも良い訳ではなく、多角的な視点が必要です。
お問い合わせの際は、材料選定に必要な使用環境などの情報は、たくさんあればあるほど的確なお話ができます。
ぜひ、『ご相談、ご要望など』の自由記入欄に、ご記入ください。

今回も、3種類の金属の比較と材料選定のポイントについてツラツラお話をしましたが、やっぱり難しい!選定しきれない!!場合は、お気軽にこちらからご相談ください。一生懸命、お手伝いいたします。

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